このトレーニング⑤は、ハマジメソッドの中でも「柔軟性の回復と確認」に特化したメニューです。高い音からスタートして2オクターブを下り、再び上がっていく分散和音ですが、これを練習だと思わずウォームアップだと言い聞かせることが成功のコツです。頑張って音を当てにいったり、強く吹き込んだりしてはいけません。唇を柔らかく動かすことに集中し、音が外れても立ち止まらずにテンポ通り進める。ミスを許容することで、体が本来持っている柔軟な反応を引き出します。唇をマッサージするような感覚で吹くことで、その日のアンブシュアのツボを確認できます。
- 分散和音の練習ですが、目的は「唇を柔らかくすること」と「今日の状態を確かめること」です。絶対に吹き込まず、軽い息を維持しましょう。
- 息がだんだん太くなってから細くなる。また、口の中が狭いところから広くなり、戻っていく。この変化を物理的に確かめる作業だと捉えます。
- タンギングははっきり突くのではなく、「ティ・ティ・ティ」というルーズな感触で行います。舌の力を抜き、息の流れを妨げないように動かします。
- ミスを気にせず、指定のテンポでどんどん前に進んでください。止まらずに吹き切ることで、音域間のスムーズな移行感覚が身に付きます。
ミスを恐れず『流れ』を優先する
多くの人は、音が外れると「正しく直そう」として力んでしまいます。しかし、このメニューにおいてはその修正が逆効果になります。軽い息で、もし音がスカスカになってもそのまま続ける。そうすることで、唇の余計な緊張が取れ、自然に音がはまってくる瞬間が訪れます。口の中の容積を広げたり狭めたりする変化を、息のスピードだけでサポートする。この最小限のコントロールを覚えることが、ホルンのハイトーンや広い跳躍を楽にする秘訣です。力を抜けば抜くほど、楽器が助けてくれる感覚が掴めるはずです。音程へのこだわりを一度捨て、息の流れそのものに身を任せてみてください。
練習のステップ
- ① 高い音からスタートし、分散和音のラインを軽い息でなぞるように吹きます。息の入り口から出口まで一定の流速を保つことが大切です。
- ② 「ティ・ティ・ティ」というルーズなタンギングで、舌の力を抜いて動かします。
- ③ 音域に合わせて、口の中が狭い(高音)→広い(低音)→狭い(高音)と動くのを感じます。
- ④ 音が外れても気にせず、メトロノームに合わせて最後まで止まらずに吹き切ります。
まとめ
ホルンのトレーニング⑤は、軽い息とルーズなタンギングによる分散和音練習です。目的は「唇のコンディションを整えること」にあります。ミスを恐れず、息と口内の変化を確認しながら進めることで、ホルン奏者に不可欠な柔軟性が養われます。毎日のウォームアップの後半に取り入れ、リラックスした鳴りを確認してください。最後は、音が外れても笑えるくらいの精神的な余裕を持って、唇の自由度を最大限に高めましょう。この「遊び」の感覚こそが、難曲に挑む際のしなやかな身体操作の土台となり、演奏全体の余裕を生み出す結果に繋がります。毎日少しずつの変化を楽しみながら、コツコツと継続していきましょう。