- テンポ表記はあくまで目安であり、絶対的なものではない。楽譜の数字に縛られず、曲が生きるテンポを探ることが重要
- 同じ「プレスト」でも曲によってその意味は異なる。曲に応じたテンポ設定、曲が生きるテンポ設定を考える必要がある
- 転調によってテンポが変わるのは自然なこと。長調から短調に転調する際など、調性の変化に応じてテンポを調整することで音楽の流れを活かす
- 音楽のテンポは心拍数に例えられる。人間の心臓は常に同じ速度で刻むわけではなく、テンションに応じて変化する。音楽も同様に、その場に応じたテンポがある
- 練習ではメトロノームに従うが、本番では柔軟なテンポ表現が求められる。数字にとらわれず、感覚を大切にし、自分自身の音楽的表現を見つけることが重要
テンポとは何か:数字と音楽の間にあるもの
サクソフォン演奏において、テンポは楽譜に記載された数字だけで決まるものではありません。最近の楽譜には、メトロノームの数字が記載されていることが多く、例えば「四分音符=120」のように具体的な数値が示されています。しかし、そのテンポが本当に正しいのかというのは結構怪しいところがあると考える必要があります。メトロノームには重りがあり、重りの上で120に合わせているのか、下側で合わせているのか、これでもテンポが変わってくるわけです。本当にみんながみんな上で合わせているのか、いろいろ疑いの残ることが多いのです。
テンポの概念:数字か、音楽か
テンポ表記はあくまで目安として捉えることが重要です。160と書いてあったら絶対160でなければいけない、ではなく、160ぐらいの目安として捉え、もうちょっと自分の思うのはもうちょっと早めかな、と考えることができます。同じ「プレスト」と書いてあっても、曲が違ったら違うプレストなのです。この曲のプレストとこの曲のプレストは違うわけです。なのでその曲に応じたテンポ設定、曲が生きるテンポ設定を考える必要があります。決して120だからずっと120、160だからずっと160というわけでもありません。
転調によってもテンポというのは絶対変わります。これとっても大事なことで、曲というのは大体の曲は基本的には絶対転調するわけです。その転調によって世界が変わっていく。転調によってキャラクターを持っている。長調なのか短調なのか。短調の方がもしかしたら速い方が生きるかもしれないし。だから基本的に120と書いてあって長調→短調→長調という風に、曲の構成が仮になっていたとしましょう。長調→短調→長調をずっと120でやるのだと、これはせっかく長調から短調に行って長調に戻るという、これを活かしていないことになるわけです。
原因と対策:サクソフォン演奏における「生きたテンポ」を見つけるための思考法
人間の心臓だってそうです。ずっと同じ速度で刻むわけではないですよね。テンションが上がったらちょっと早くなるかもしれないし、ちょっと落ち着いた時は心拍数も下がる。もともと音楽のテンポというのは心臓の心拍数だと思っていて、その心拍数、それが人間の本能に一番スッと入ってくるわけです。メトロノームの1分間に60とか、そういう数値は目安にしてやるだけですから絶対的なテンポというのはあくまで人間の感覚によるものというふうにぜひ捉えてください。
例えば吹奏楽ではマーチとかよくやりますが、マーチでずっとメトロノームをつけてやると思いますが、ずっとそれに従わなければいけないわけではないのです。あれはあくまで練習用の補助、補助用の機械なわけです。で本番というのはつけないわけですよね。トリオになって転調したらちょっとトリオのテンポが変わるというのが音楽としては自然なわけです。トリオも全部同じテンポというのはいかがなものかなと思うわけです。音楽にはその場に応じたテンポだったりテンションに応じたテンポというのがあるということを必ず頭に入れていただいて、それをご自分で感じ取ってそれを表現する、まあここに最大の楽しみがあるわけですが、なので数字だけにとらわれず数字に現れないテンポ感というのを皆さんぜひ見つけてみてください。
実践:曲が生きるテンポを探るステップ
曲が生きるテンポを見つけるためには、楽譜の数字を出発点として、自分の感覚と曲の特性を照らし合わせることが重要です。以下のステップを通じて、数字に縛られない「生きたテンポ」を見つけることができます。
- ① 楽譜のテンポ表記を確認する:まず、楽譜に記載されているテンポ表記(四分音符=120など)を確認します。ただし、これはあくまで目安として捉えます。
- ② 曲全体の構成を把握する:曲がどのような転調をするのか、長調から短調に変わるのか、どのようなキャラクターの変化があるのかを把握します。
- ③ 各セクションでテンポを試す:長調の部分、短調の部分など、それぞれのセクションで「この音楽が一番生きるテンポ」を探ります。同じ「アレグロ」でも、長調のアレグロと短調のアレグロは違う可能性があります。
- ④ 転調に応じてテンポを調整する:転調によって世界が変わることを意識し、転調に応じてテンポを柔軟に調整します。短調の方がもしかしたら早い方が生きるかもしれない、という感覚を大切にします。
- ⑤ 心拍数に例えて感覚を掴む:音楽のテンポは心拍数に例えられることを意識し、テンションが上がったらちょっと早くなる、落ち着いた時は心拍数も下がる、という自然な変化を音楽にも反映させます。
- ⑥ 練習ではメトロノームを活用し、本番では柔軟に:練習ではメトロノームに従って正確なテンポを身につけますが、本番ではその場に応じたテンポ、テンションに応じたテンポを表現します。
- ⑦ 数字に現れないテンポ感を見つける:数字だけにとらわれず、数字に現れないテンポ感を見つけます。自分自身の音楽的表現を見つけることが、音楽の最大の楽しみです。
まとめ
サクソフォン演奏において、テンポは楽譜に記載された数字だけで決まるものではありません。メトロノームの数値はあくまで目安であり、同じ「プレスト」でも曲によってその意味は異なります。転調によってテンポが変わるのは自然なことで、音楽のテンポは心拍数に例えられる人間の感覚によるものです。練習ではメトロノームに従って正確なテンポを身につけますが、本番ではその場に応じたテンポ、テンションに応じたテンポを表現することが重要です。
数字にとらわれず、曲が生きるテンポを見つけることが、音楽的な表現を豊かにする鍵となります。転調に応じてテンポを柔軟に調整し、長調から短調に転調する際など、調性の変化に応じてテンポを変えることで、音楽の流れを活かすことができます。音楽にはその場に応じたテンポ、テンションに応じたテンポがあるということを頭に入れ、それを自分で感じ取って表現する。ここに音楽の最大の楽しみがあります。数字だけにとらわれず、数字に現れないテンポ感を見つけることで、あなたのサクソフォン演奏はより豊かで表現力に富んだものへと変化するはずです。