トレーニング⑥の核となるのは、これまでの軽いウォームアップから一歩進んだ「実戦的な息の使い方」です。上行スケールにおいて、高音へ向かうにつれてクレッシェンドし、息のスピードを意図的に高めていく。そして帰ってくる。このダイナミクスの変化を伴う練習が、実際の楽曲での表現力に直結します。息をフラットに流し続け、そこに舌をそっと添えるような「ター・ター」というイメージでの発音を心がけましょう。息の支えを緩めずに舌を動かすことで、音の芯が揺るがなくなります。音を切るのではなく、息の川の中にタンギングを置く意識が重要です。高音域でのスピードアップが、音の輝きを作ります。
- 上行スケールでは、高音に行くほど息のスピードを上げ、クレッシェンドする癖を付けます。これが高音を痩せさせないための実戦的な技術です。
- 息の流れは常に「フラット」を意識。音を切るのではなく、流れている息の川に舌を置いて「ター」と発音するイメージで繋げます。
- フラット系だけでなく、ゲス・ドゥアやハ・ドゥアなどの全調にチャレンジしてください。ホルンには全調の指の習熟が絶対に必要です。
- これはあくまでトレーニングの一環なので、5分〜10分と時間を決めて集中します。スタミナを使い切るまで必死にやる必要はありません。
全調練習が『指の迷い』を消す
吹奏楽部などではフラット系の調ばかりを練習しがちですが、オーケストラ曲や現代の吹奏楽曲では、ホルンはあらゆる調での運指を要求されます。難しいと感じるシャープ系の調でも、毎日少しずつ触れることで「身になっていく」感覚が得られます。まずは自分のできる範囲、例えばFからハイFまでのスケールから始め、徐々に音域と調の種類を広げていく。指の迷いがなくなるほど、意識を息のコントロールに集中させることができるようになり、演奏のクオリティが底上げされます。ホルンは全調を制する者がアンサンブルを制します。苦手な調こそ、ゆっくりとしたテンポで指の通り道を確認しましょう。
練習のステップ
- ① 下のFからスタートし、上に行くにつれて息のスピードを上げるクレッシェンドを意識します。
- ② 「ター・ター」と息を流し続けたままタンギングし、レガートな質感を保ちます。
- ③ 慣れていない調(ゲス・ドゥア等)も飛ばさず、ゆっくりで良いので指を確認しながら吹きます。指の抵抗を感じないくらい滑らかに動かせるまで反復しましょう。
- ④ 自分ができる最高音まで行ったら、息のスピードを保ったまま落ち着いて下りてきます。
まとめ
ホルンのトレーニング⑥は、実戦的な息の使い方と全調の運指を同時に磨くスケール練習です。上行クレッシェンドで息のスピードを養い、苦手な調を克服することで、合奏やソロでの対応力が格段に上がります。時間は短くても「毎日全調に触れる」という質の高い練習を積み重ね、自在に楽器を操る力を手に入れましょう。全調練習を終えた後の、指と耳の鋭敏な感覚を大切にしながら、曲の練習へ移るのが理想のルーティンです。この習慣が、どんなに難しい楽譜を渡されても物怖じしない「プロの自信」を育み、ステージ上でのパフォーマンスをより確実なものにしてくれます。