clarinet 初級

クラリネット上級者の表現力を磨く!ローズ32のエチュード第1番(後編)徹底解説

クラリネット学習者のバイブル「ローズ32のエチュード」。第1番の後編では、Bセクションの劇的な転調やトリルの高度なテクニックを照沼夢輝講師が詳しく解説します。楽譜の指示を超えた、音楽の本質に迫る表現の極意を学び、一段上の演奏を目指しましょう。

講師
照沼 夢輝
更新日
2026.01.27

※本記事は動画の内容に基づいてCreatone運営事務局が作成しました

動画情報
  • タイトル:クラリネット上級者の表現力を磨く!ローズ32のエチュード第1番(後編)徹底解説
  • 楽器名:clarinet
  • レベル:初級
SUMMARY
この記事のポイント
  • Bセクションにおける短調(ト短調/イ短調)への転調と感情表現
  • ロマン派の様式に基づいたトリルの実践的な演奏法
  • 左手の替え指を活用したスムーズな運指と音程の安定
  • 再現部におけるピアニッシモの質感とエコーの表現
  • 「音の痛み」を感じさせるアポジャトゥーラ(非和声音)の歌い方

クラリネット学習者にとって避けては通れない名曲、C.ローズの「32のエチュード」。その第1番は、基礎的な技術から音楽的な歌い方まで、多くのエッセンスが凝縮されています。今回は第1番の「後編」として、曲の中盤から終わりにかけての重要ポイントを深掘りします。単に楽譜通りに吹くだけでは得られない、プロの解釈とテクニックを余すところなく解説します。転調による色彩の変化や、歴史的背景に基づいた装飾音の扱いを学び、あなたの演奏に魂を吹き込みましょう。

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Bセクション:短調への転調とドラマチックな表現

曲の構成上、Bセクションは大きな転換点となります。明るい変ロ長調から、実音でト短調(クラリネットではイ短調)へと転調し、音楽は一気に険しさと深みを増します。ここでは、イメージをガラッと変え、暗く内省的な響きを作ることが求められます。特に2小節目のヘアピン(マツバ)のような強弱記号は、単なる音量の変化ではなく、感情の起伏として捉えてください。18小節目で一度開放的な広がりを見せた後、20小節目に向けて再び暗い影を落としていく。このドラマチックな色彩の変化こそが、クラリネット奏者としての表現力の見せ所です。

Lesson Point
トリルの奏法には歴史的なルールがあります。古典派では「上から」入れるのが一般的でしたが、このローズが書かれたロマン派以降の時代では、基本的には「下(主音)から」始めます。このスタイルの違いを理解し、曲の時代背景に合わせた装飾を施すことで、演奏の説得力が格段に高まります。

テクニカルな難所:指使いと音程の管理

  1. 20小節目のドは左手で押さえ、次のレ#を右手で準備する替え指の練習を行います。
  2. 再現部のラシラシのトリルは、サイドキーの一番上を活用し、安定した音程を保ちます。
  3. ドルチェのセクションでは、非和声音(イオン)の「ぶつかり」を意識し、解決する際の緩和を楽しみます。
  4. 再現部のピアニッシモは、冒頭のメロディに対する「エコー(残響)」のように繊細に演奏します。
⚠️
ここをチェック
再現部直前のフェルマータでは、ブレスのために緊張感を途切らせてはいけません。「5度の和音(ドミナント)」による緊張が続いていることを意識し、次の主音に向かうエネルギーを保持したままブレスを取るようにしましょう。また、32分音符が忙しく聞こえすぎないよう、リタルダンドを効果的に使い、余裕のある優雅な動きを目指してください。

後半部分には、クラリネット特有の運指の課題がいくつか登場します。例えば、20小節目の冒頭の「ド」の音。これを左手で取らなければ、その後の「レ#」への移行がスムーズにいきません。「迷う指使いはすべて楽譜にメモしておく」ことが、本番でのミスを防ぐ鉄則だと動画内では説きます。また、オクターブの跳躍がある箇所では、広い音程の間にあるすべての半音を頭の中で歌うイメージを持つことで、音がぶら下がったり、薄っぺらくなったりするのを防ぐことができます。技術は常に音楽的なイメージとセットで磨いていきましょう。

クラリネットで音楽の深淵を探求する

33小節目からの「ドルチェ」のセクションは、この曲の最も美しい場面の一つです。ここで動画内で強調されているのは、「イオン(アポジャトゥーラ)の痛み」です。和音とぶつかる音をあえて強調し、そこから解決する際の心地よさを表現する。これこそが、クラリネットという楽器で音楽を「歌う」ということです。単にメトロノーム通りに吹くのではなく、音楽的な重心の移動に合わせて、わずかにリズムを揺らす(ルバート)勇気を持ってください。楽譜通りに吹くことの真意は、音符の奥にある作曲家の意図を読み取ることにあります。

まとめ

ローズのエチュードは、単なる練習曲の枠を超えた「音楽の教科書」です。吹き方次第で、それは基礎練習にもなれば、バッハのパルティータに匹敵する芸術品にもなります。「演奏家次第でどんな曲も名曲になる」という言葉を胸に、1つ1つの音符、1つ1つの休符に込められた意味を考え抜いてください。今回学んだ高度なテクニックと表現の視点を武器に、ローズが描いた豊かな音楽の世界を、あなたのクラリネットで自由に描き出していきましょう。継続的な探求こそが、真のアーティストへの道です。

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